タイでの三味線の皮の製造が全面禁止になりましたが、はい、そうですか。と言ってしまえば、日本の三味線の音色は、そこで終わってしまうわけです。私たちは、別の方法、または別の土地での再開を探りましたが、これが結構、厳しかった。そもそも、年々、国内の市場が減っている状況で、資金も限りのある個人営業の会社では、限界がありました。それでも、この間、インド、ベトナム、ラオス、カンボジアなどを回り、可能性を探りました。これは、これで得難い経験ではあたのですが・・・まずは、どうしても採算性を考えなくてはならないので、原料はあっても、値段が合わなくては、土台無理な話になります。そこで、発想の転換として、ヤギの皮では、どうだろうか?と考えました。ヤギの皮は、中東、南アジアの伝統楽器の皮として使用されており、また、バンジョーでも使われている、また原料も持続可能な形で入手可能でした。あとは、この原皮を、三味線の皮に加工する工夫が必要でした。三味線の皮の加工は、一種、独特な製法で(非常に歩留まりの悪い、前近代的な製法ともいわれる)果たして、音質はどうか?が一番の課題になりました。この製法に試行錯誤を繰り返し、約1年かけて、製品化したのが、撥道でいうVintage Tone の皮となりました。特に、長唄などでも薄い皮を張る奏者には、非常に高い評価を受けました。ただし、張り方にひと手間、ふた手間、かける必要があり、長年、犬皮で慣れ親しんでいる、張り手には、不評であったのも事実でした。しかしながら、冷静に将来を見据えたときに、果たして、今までのような、犬、猫の皮を使用し続けることは可能か?これは、この業界の人間だけではなく、演奏家も含めて、一度、真剣に考える必要があるのではないでしょうか?東南アジア、または中国など、犬、猫を食用、または皮革を生活で使用している国がありますが、これらの国でも、近年は、目まぐるしい経済成長を遂げ(日本の成長率が1%あるかないか?のなか、これらの国は、年に4から7%の成長を遂げている)生活が豊かになり、犬猫は、愛玩動物として大事にされ、動物愛護にも熱心なグループもあります。どこか、彼らを遅れた国と見下していませんか?日本で、製造できないのなら、もうすでに、伝統とは呼べないのではないでしょうか?時々、私は、そんな事を思うのです・・・どうか、皆さんも一度、考えてみてはいただけませんでしょうか?
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